捕物出版
有明夏夫著 浪花の源蔵召捕記事全集

捕物小説で直木賞を受賞した唯一の作品である「大浪花諸人往来」。文明開化期の大阪の町を舞台としたユニークでユーモラスな捕物小説です。しかし、近年は文庫本も久しく絶版となっており、「消えた直木賞 男たちの足音編」(メディアファクトリー)という本に掲載されるまでになっていました。
その後、近年になってようやく電子書籍化が進みましたが、文庫本に未収録の作品は残されたままとなっています。
1978年に発表された第1作の「西郷はんの写真」から1985年に新聞連載された「汚名をそそげ」までの35編の作品を発表年代順に全5巻にまとめたのが本書です。さらに単行本刊行完了後に執筆された番外編ともいえる1編(単行本未収録)、「四人組を逃がすな」を第5巻に収録しています。

浪花の源蔵召捕記事全集1
浪花の源蔵召捕記事全集第1巻

小説現代昭和47年6月号に掲載された有明夏夫氏の「FL無宿のテーマ」は、第18回小説現代新人賞を受賞し、同年の第67回直木賞では候補となりました。以後、有明夏夫氏は直木賞の70回、74回、76回と候補になり、角川書店、野性時代に連載された「耳なし源蔵召捕記事」の連作をまとめた「大浪花諸人往来」(角川書店)が、ついに第80回直木賞受賞(1978年下半期)に輝きました。捕物小説としては唯一の直木賞受賞作という輝かしい作品です。
文明開化期の大阪…東京や横浜などに比べると古い資料を調べるのは格段に難しい場所柄であると思われます。使われている言葉も現代の大阪弁ではなく、今では上方落語にしか残っていないような言い回しです。非常に詳しく幕末から明治初期の大阪を調べて書きあげているのにもかかわらず、「私、勉強しました!」といった臭みがなく、さらっと表現されているのが素晴らしいと思うのです。
第1巻は直木賞受賞作の「大浪花諸人往来」所収の、西郷はんの写真、天神祭の夜、尻無川の黄金騒動、大浪花別嬪番付、鯛を探せ、人間の皮を剥ぐ男の6編を収録しています。
ISBN:978-4909692108
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浪花の源蔵召捕記事全集第2巻
浪花の源蔵召捕記事全集第2巻

野性時代に連載された「耳なし源蔵召捕記事」は、作中に登場する菅原警察署の厚木寿一郎一等巡査が、十等警部に昇進し曽根崎警察署に栄転することで、いったん完結しますが、直木賞受賞という快挙を受けて、野性時代1979年6月号より連載が断続的に再開されます。
第2巻には、新春初手柄、異人女の目、大浪花葬礼情景、狸はどこへ行った、召捕夢物語、灯台の光、不知火の化粧まわしの7編を収録しています。「狸はどこへ行った」は単行本化の際の表題作となった作品でもあるにもかかわらず、文庫本には収録されませんでした。文庫本未収録の大浪花葬礼情景とならんで30数年ぶりの刊行となります。どちらも面白い作品ですので、ぜひ多くの方に読んでいただきたいと思います。
ISBN:978-4909692115
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浪花の源蔵召捕記事全集第3巻
浪花の源蔵召捕記事全集第3巻

野性時代への連載はその後も続き、1981年には7作品が掲載されました。また、野性時代での連載中に、NHK大阪放送局の制作によるテレビドラマ「浪花の源蔵事件帳」が10月に開始されました。赤岩源蔵親方役は桂枝雀、厚木寿一郎警部役は加藤武でした。
ただし、さすがにテレビドラマ化する際には、「耳なし」というわけにはいかず、桂枝雀の演ずる源蔵には左耳が健在で、ドラマの題名も「なにわの源蔵事件帳」に改められています。
浪花の源蔵召捕記事全集第3巻では、1981年に野性時代に掲載された7作品、浪花富士の計画、印度から来た猿、桔梗は見ていた、消えた土地、月へ旅する日、京街道を走る、猫の災難を収録しています。
ISBN:978-4909692122
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浪花の源蔵召捕記事全集第4巻
浪花の源蔵召捕記事全集第4巻

野性時代への連載は厚木寿一郎が八等警部に昇進し、曽根崎警察署の副署長に就任するところで完結します。
その後、源蔵シリーズは、掲載誌が小説現代にかわって1983年3月号より連載が始まります。
浪花の源蔵召捕記事全集第4巻では、1983年に小説現代に掲載された、人力車は往く、石油のような男、蔵屋敷の怪事件、艶女衣装競べ、エレキ恐るべし、絵図面盗難事件、恋の鞘当て異聞、輸入薬のゆくえの8作品を収録しています。
ISBN:978-4909692139
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浪花の源蔵召捕記事全集第5巻
浪花の源蔵召捕記事全集第5巻

小説現代での連載が続いている最中の1983年11月にはNHKの「浪花の源蔵事件帳」が再開されました。赤岩源蔵親方役には桂枝雀に代って芦屋雁之助が出演しますが、厚木寿一郎警部役の加藤武、駒千根役の三林京子など主要メンバーは続投となりました。
小説現代への連載は1984年1月号の脱獄囚を追え(原題 脱獄囚はどこに)で完結しますが、同年9月6日からは京都新聞の夕刊に新聞小説として連載が始まりました。その後、福島民報、北海タイムスなど7地方紙にも掲載は広がって、計5作品が連載されます。
この新聞連載された作品は光文社カッパノベルス「汚名をそそげ 浪花の源蔵召捕記事」(1985年11月)として単行本化されました。
新聞連載の最終作、「汚名をそそげ」では、厚木寿一郎は七等警部に昇格、難波警察署長に栄転となり、一連の物語の完結をみたのです。
ところが、その後、1編だけ執筆された続編が見つかりました。1986年2月号のオール讀物で、「名親分捕物控」という特集が組まれ、そこに「四人組を逃がすな」が掲載されたのです。厚木寿一郎七等警部が難波警察署長に就任した後の話で、番外編ともいうべき内容となっています。 浪花の源蔵召捕記事全集第5巻では、善人の仮面、脱獄囚を追え、川に消えた賊、扇子は届いたか、穴をあけた理由、いわくありげな女、汚名をそそげと、最終作となった四人組を逃がすなの8編を収録しています。
ISBN:978-4909692146
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